航空レーザ測深で作成した極めて詳細な海底地形図で釣りをサポートするウェブアプリ『釣りドコ』のフルリプレイスを担当しました。
MIERUNEは、調査・設計からデザイン・開発までの全フェーズに参画しました。
AWSに関する豊富な知識と経験を活かして、フルリプレイスによる圧倒的なコスト削減を実現しています。機能についても、デザインリニューアルによる操作感の向上や、釣果以外の情報の拡充、課金機能の追加などを実施しました。
新規事業創造本部 マリンイノベーション室 室長 高柳茂暢様 主任技師 後藤和郎様
最適な提案を可能にする技術力
“空間情報コンサルタント”として最新の航空機とセンサによる空間情報の収集・解析や活用サービスを提供するアジア航測株式会社。同社が2019年に提供開始したウェブマップアプリ「釣りドコ」は、航空レーザ測深によって得られた沿岸部の海底地形を水深段彩図と赤色立体地図で見られるサービスで、リリース以来、約150万人の方に利用されています。

釣りドコ
MIERUNEはこの「釣りドコ」の地図配信システムやアプリのフロントエンドなどすべてのリプレイスを行いました。この開発の経緯やリニューアル後のユーザーからの反響、今後の展望などについて、同社の新規事業創造本部マリンイノベーション室の室長を務める高柳茂暢様と、主任技師の後藤和郎様に話をお聞きしました。

アジア航測の後藤和郎様(左)と高柳茂暢様(右)
高柳様 弊社は昔から“技術のアジア”と呼ばれていて、新技術や新製品にも強い関心を持っており、10年ほど前に従来よりも大幅に小型化したALB(航空レーザ測深)のシステムが登場したときにも、弊社はいち早くこのセンサを導入しました。ALBは緑色レーザを使用した計測器で、水底の形状を高精度に測定できます。これまでの海底地形図は船舶による音響測深で測定するのが一般的だったため、船舶が航行できない沿岸部の浅海域の地形を計測するのは難しかったのですが、航空機からALBを使って計測することにより、浅海域から陸地までシームレスに詳細な海底地形のデータを取得することが可能となりました。
このALBの性能に衝撃を受けたことが「釣りドコ」のサービスを提供開始するきっかけとなりました。釣り人が釣れそうなスポットを検討する際に、これまでは経験と勘で推測していました。また、ステップアップして地図を使う場合でも、衛星写真や航空写真などを見て海底の深さを推測するしか方法がありませんでした。ALBによって取得した海底の地形データを活用することで、誰でも簡単に海底地形を把握し、釣れそうなスポットを見つけ出すことができます。有料プランもご用意はしていますが、このすばらしい海底の詳細な地形図を多くの方に見ていただけるように、水深段彩図については無料で見られるようにしています。これを見た民間企業や自治体のお客様が「このような技術があるならぜひ使ってみたい」と思っていただき、測量の仕事をいただければ当社の本業にも良い影響が生まれるのではないかと考えています。

航空レーザ測深(ALB)の概要(画像提供:アジア航測)
後藤様 ALBはもともと日本国内では海よりも河川の計測に活用される場合が多く、河川の底の地形データを取得することによってどこが大雨の時に水が溢れそうになるのかを特定し、必要に応じて浚渫するといった治水工事などに活用されていました。一方で、海については港湾工事など限定的な使い方の他はあまり活用される機会は少なかったのですが、釣りドコは浅海域の海底地形データの活用方法のひとつとして、これまでになかった事例を示すことができたと思います。
高柳様 私は学生時代に魚類生態学を専攻していて、後藤は釣りが好きだったのですが、2人とも最初にALBのデータを見たとき、感動すると同時に、私は魚の居場所が見え、後藤は釣りに使えると直感しました。私たちはこの感動をぜひとも皆さんに味わっていただきたい、と考えており、リリースから3年以内に釣り人の間で有名になり、その後は釣り人以外の人にも広く知っていただき、10年後は世界中の人に知ってもらいたいと思って釣りドコの運営と普及に努めています。

ALBで計測したデータをもとに作成した水深段彩図(画像提供:アジア航測)
高柳様 弊社には新規事業のビジネスアイデアを募集する社内ベンチャー制度があり、「釣りドコ」の企画を出したのはこの制度ができて2年目のときでした。弊社は新しいアイデアを歓迎する社風があり、「釣りドコ」のアイデアも、アジア航測が得意とする技術を活かしてブルーオーシャンの市場を作れる可能性があるということで、比較的スムーズに企画は通りました。ただし、これまでコンシューマー向けビジネスはあまり提供してこなかったので、課金収入を得るノウハウなどが無く、社内からアドバイスを得ながらひとつずつクリアしていくのは大変でした。

高柳様 これまで釣り人が海底地形を知る方法としては、航空写真や衛星写真を見て海の透明度や岩場の位置を見て深さを推測することしかできなかったのですが、「釣りドコ」の水深段彩図や赤色立体図を見れば、誰もが簡単に海底の地形を把握することができます。実際に我々も「釣りドコ」を見て海底地形を考慮しながら場所を選んで釣りをすると、釣果が上がることを実感できます。船の上から水中カメラを入れてみると、地形変化が大きいエリアや、“根”と呼ばれる岩礁地帯には魚が群れていますが、地形変化が少なかったり、底質に変化が少ない環境では魚があまり居ついていません。
釣りの初心者は海底の地形をあまり気にしない人が多いのですが、経験が増えるにつれて次第に風や水温、潮汐などを気にするようになり、その先に海底地形を気にするようになるものです。実は「釣りドコ」は釣りの初心者をターゲットとして提供開始したのですが、いざサービスを提供開始してアンケートを採ってみると、何と7~8割が釣り歴20年以上というベテランの方々で驚きました。ユーザー様の中には「釣りドコがないと釣りにならない」「釣りドコを使い始めてからボウズ(魚が全く釣れないこと)が無い」と絶賛してくださる方もいます。
高柳様 当初はGoogleマップ上に水深段彩図や赤色立体図を重ねて表示させていたのですが、あまりにも地図が重く、読み込みも遅いしサーバーコストの負担も大きいという状況でした。特に通信速度が遅い場所などでは、表示されるまで3秒間以上かかるのでイライラするというユーザーの声もあり、これはなんとかしないといけないと考えてシステムのリニューアルを考え始めたのが、リリースから3年目くらいの頃でした。「釣りドコ」はスモールスタートということでネイティブアプリではなくPWA(Progressive Web Apps)で開発する必要があり、最初はPWAの開発実績のある企業にお願いしていたのですが、地図の表示速度などを改善するには、やはり地図の扱いが得意な企業にお願いする必要があると考えて、別プロジェクトでお付き合いのあったMIERUNEさんに相談しました。
MIERUNEさんは地図や位置情報に特化した会社であり、常に最新の技術を採り入れている姿勢に魅力を感じました。要件定義の段階でも、我々から細かくリクエストしなくても最適な提案をしてくれる点と、それを実装するための技術力を持っていることも魅力でした。地図配信システムをリニューアルする前は地図をスクロールさせると先にGoogleマップが動いて、その後に遅れて水深段彩図が動くという状況でしたし、タイルの読み込みにも時間がかかるという状況でしたが、タイル化した地図データをクラウドから配信する方法に変更することで、地図の動きが見違えるように改善され、サーバーコストも大幅に下がりました。
高柳様 UI/UXについても、これまでは地域を選択してから該当地域の水深段彩図を表示させる流れとなっていましたが、「とにかくまず地図を見てもらいたい」という姿勢を打ち出すために地図を最初に表示するようにして、その上で色々なメニューを辿っていくことでさまざまな機能が使えるようにしました。将来的に今よりも水深段彩図を見られるエリアが多くなったときのことも考えると、この方が格段に使いやすいと思います。
これまでは、ウェブサイトにアクセスしてもすぐに地図が表示されなかったため、そのまま閲覧をやめてしまう方も多くいました。そこでリニューアル後は、水深段彩図の魅力をより多くの方に伝えられるよう、アクセスすると最初に水深段彩図が表示されるUIに変更しました。また、以前はできなかった地図の全画面表示にも対応しました。さらにボタンの配置については使いやすさにもこだわり、画面の下部に固めて、シンプルで直感的な使い心地を追求しました。
このほかの変更点としては、以前は釣果のみ記録することができたのですが、リニューアル後はさまざまなユーザーの情報をPOIとして任意のポイントに登録できるようになったほか、この機能を使って釣り関連のメディアの情報も“釣りメディア”というアイコンで掲載しています。UI/UXについてはリニューアル時にMIERUNEさんにも一緒に色々と考えていただきましたし、今でも少しずつ改良を続けています。
後藤様 今回のリニューアルは旧システムの「改修」ではなく「フルリプレイス」で、課金メニューも変更したため、それまでご利用いただいていた各プランの契約は一旦打ち切り、ユーザーのログイン情報だけをそのまま引き継ぎました。長くご愛用いただいているユーザー様も多く、既存のユーザー情報を引き継ぐのはとても気を使いました。ユーザーのメールアドレスでドットが2個つながっているなどイレギュラーな記載の処理に困ったり、SNSアカウントでの登録を引き継ぐかどうか悩んだりと、当初想定していなかった細かな部分の対応に苦労しました。

高柳様 一言で言うと、こちらの期待を越えてくれるとことですね。今回のリニューアルに際して「地図上で距離を測るツールがどうしても欲しい!」とリクエストしたら、2週間くらいでデモを作ってくれたのですが、細かく指示したわけでもないのに、直線を引いて距離を測れるだけでなく、スライドで同心円の大きさを調節することも可能でした。この機能があれば、投げ釣りのときに自分の飛距離に基づいて釣れるエリアを選定することが可能となりますので、同心円による距離測定距離は非常に大事です。我々以上に釣り人のニーズをしっかりとくみ取り、こちらの期待以上の機能を作ってくれたことには本当に驚きました。
また、全体的なデザインもスタイリッシュでモダンに仕上げていただき、リニューアル前の、Webサイトに近いデザインに比べてよりアプリに近い洗練されたものになったと思います。定例の打合せには弊社のシステム管理の担当者も同席していたのですが、その担当者からもMIERUNEさんの技術力や提案力は好評でしたし、「こういう新しい技術があるので、これを使いましょう」と色々と提案していただけたのは良かったです。背景地図などについても提案時に色々な候補を見せてくれるので、とてもわかりやすかったです。
高柳様 SNSでは「全画面表示ができるようになった」と喜びの声が寄せられ、釣り関連のイベントでも「釣りドコを使ってるよ!」と声をかけられることが明らかに増えました。以前は「測量会社が釣りのイベントに出展している」というだけで面白がっていただけていたのですが、最近は実際に使ってくれている方が声をかけてくださるので、確実にユーザーは多くなっていると感じます。課金してくださる方も確実に増えており、新規ユーザーの課金率は以前と比べて40倍に伸びています。
高柳様 ユーザーの反応を見て使われる機能と使われない機能をチェックしながら、良い機能は残して課金ユーザーの数を伸ばしていきたいと思います。現在、深場の海底地形図というのは日本のごく一部でしか提供されていませんが、これを必要とする声が寄せられることもあるので、全国の海底地形図のオープンデータを使って深場の海底地形の赤色立体図を提供することも検討しています。浅海域の地図もいずれは全国くまなく見られるようにしたいと考えていますし、ユーザー数が増えればネイティブアプリ化も検討していきたいと思います。
後藤様 まだ詳しくは言えないのですが、密かに温めている新機能のアイデアがあり、実現でき次第順次追加したいと考えています。釣りドコは水深段彩図に留まらず、ユーザーの皆様から「他にない情報が得られる!」「釣果アップの最強ツールだ!」なんて思ってもらえるようになりたいですね。
高柳様 昔は良い技術や良い商品を持ってさえいれば事業を発展できましたが、今はそういう時代ではなく、どのような情報でもスマートフォン1台あれば誰でもアクセスできる環境が整っているので、良い技術や商品をどれだけ多くの人に使っていただけるかが重要となります。弊社としても、測量成果をただ納品するだけでなく、新たな事業を創り出していくために、その先の利活用も考えて必要としている人にきちんと届けていかなければいけないと思いますし、これまで誰も見たことのないデータであれば、それをうまく“料理”して「こういうメニューがありますよ」とわかりやすく提示することも大事だと思います。測量業界でも今後はそのようなマインドが必要となる時代であり、「釣りドコ」はまさにそれを具現化したサービスであると思っています。
後藤様 MIERUNEさんのエンジニアから、趣味で作った地球を回る人工衛星を可視化したコンテンツを見せていただいたことがあるのですが、こういうことを趣味でやってしまうというバイタリティに驚きました。MIERUNEさんには今後もどんどん新しいものを見せてくれることを期待しています。
高柳様 MIERUNEさんのフットワークの軽さには非常に助けられており、仕事をお願いしたときはすぐに対応していただいています。お互いフットワークが軽いので、北海道や東京で一緒に釣りをすることもあります。MIERUNEさんは良い意味で尖った“変人”が多くいる会社で、イノベーションというのはこういうところから始まるものだと思っていますので、今後もどんどん尖りまくった方を集めて無敵の会社になってほしいと思います(笑)。

(画像提供:アジア航測)

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