News 記事

QGISの水文解析ツール開発を支援しました

MIERUNEは、QGIS本体に水文解析ツールをネイティブ実装するためのクラウドファンディング「Native QGIS Tools for Hydrology」に支援を行いました。本プロジェクトで開発された機能は今後リリース予定の「QGIS 4.4」に標準搭載される予定です。

プロジェクトについて

本プロジェクトは、QGISの水文解析教育・普及に取り組むオランダのQWAST-GIS(Hans van der Kwast さん)が発起人となり、QGISコア開発者の Nyall Dawson さんが率いるNorth RoadとLutra Consultingが開発を担当したものです。

DEMからの流向計算や集水域抽出などの水文解析は、防災計画などに活用される重要なGIS機能の一つです。しかしQGISではこれまでSAGAやGRASSといった外部ツールに依存する必要があり、環境構築の難しさや動作の不安定さが世界中のQGISユーザーにとって長年の課題でした。本プロジェクトは、これらの処理をQGIS本体にネイティブ実装することで、追加のセットアップなしに安定した水文解析を可能にするものです。

クラウドファンディングは2026年8月19日(水)に7,000ユーロ(約125万円)をともに達成し、最終的に35名の支援者から合計7,340ユーロ(QWAST-GISのシード支援を含む)が集まりました。MIERUNEは目標達成に向けた最終段階で2,000ユーロを支援し、支援者の一覧にはMIERUNEのロゴが掲載されています。

QGIS 4.4に搭載予定の水文解析ツール

水系ネットワーク・排水系ツール

  • DEMからの流向計算
  • DEMからのシュトララー次数計算(DEM単体/DEM+流向)
  • DEMからの水路・流域・合流点の抽出
  • 条件指定での水路抽出(DEM+流向+シュトララー次数)

集水域解析ツール

  • 単一の出口ポイントからの集水域算出
  • 複数ポイント(レイヤ)からの集水域の一括算出

補間

  • 薄板スプライン補間(観測井戸データからの地下水位補間など)

ラスタレンダラー(ストレッチゴール)

  • 流向ラスタのネイティブ描画
  • 流速・風向などのU/Vラスタ向け矢印・風羽(wind barb)レンダラー

支援の背景

日本は地震や豪雨による土砂災害、河川氾濫が繰り返し発生する災害大国です。地すべりや砂防の計画、洪水リスクの評価、流域単位での土地管理には、DEMからの流向計算、水路や流域の抽出、任意地点からの集水域算出といった水文解析が欠かせません。また近年は、GX(グリーントランスフォーメーション)関連案件での流域パラメータ算出など、防災以外の分野でもニーズが広がっています。

これまでこうした解析をQGISで行うには外部ツールへの依存が避けられず、環境構築の手間が活用のハードルになることもありました。QGIS本体で水文解析が完結することで、ライセンス費用をかけずに、誰もが同じ手順で安定した解析を行えるようになります。これは一企業の利益にとどまらず、国内外のQGISユーザー全体に恩恵が及ぶものです。

MIERUNEでは、新しい水文解析ツールの使い方や検証結果をQGIS LABにて順次ご紹介予定です。

これまでの取り組み

MIERUNEは2020年にも、QGIS 3.14に搭載されたベクトルタイル表示機能の開発支援を行っています。QGIS.orgのオフィシャルスポンサーとしての活動や、MapLibre・FOSS4Gをはじめとしたオープンソースコミュニティへの支援と同様に、今回の支援もQGISユーザー全体の利益につながる投資と位置づけています。

これからも技術と文化の共有、次世代の育成を目指し多種多様なコミュニティに貢献してまいります。

クラウドファンディングページ
https://www.qwast-gis.com/l/crowdfunding-native-qgis-tools-for-hydrology/

新機能と支援者の紹介(QWAST-GIS ブログ)
https://www.qwast-gis.com/l/native-hydrology-tools-in-qgis-4-4/